2005 Fiscal Year Annual Research Report
火山地域における自然撹乱と植生動態の第四紀生態学的研究
Project/Area Number |
17500705
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 助教授 (90260786)
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Keywords | 火山地形 / 植生帯境界 / 空中写真判読 / 遷急線 |
Research Abstract |
北海道から中国地方にかけての全国17座の火山について、特に亜高山帯植生と山地帯植生の境界部に着目して、火山地形と植生の関係を検討した。空中写真判読に基づく植生図化と現地調査(17座のうち3座)の結果によると、山体の侵食が進む過程で形成される山腹の遷急線が両植生帯の境界付近の標高に存在する場合、植生帯境界が遷急線と一致する例が多かった。これは侵食にともなって表層物質の移動が生じた結果、遷急線の上下で基質条件の異なる斜面が形成されることが原因となっていると考えられる。また、多雪地域においては、傾斜の差異に対応した斜面雪圧の差異によって、遷急線より下方での針葉樹林の成立が阻害されていると考えられた。また侵食や風化が進まずに形態のよく保存されて溶岩流は針葉樹林域を低標高域にまで押し下げる事例が多く、土壌の未発達と乾燥ストレスによって山地帯の落葉広葉樹林植生の成立が部分的に阻害されていることが推定された。さらに、植生帯境界が異常に低い火山の場合、貫入火山岩体のつくる地形やそれに対応する特異な気質条件が山地帯植生の上昇を抑えていることが推定された。火山噴火史との関係で火山地形の植生を観察すると、地形や堆積物の生成年代と植生への影響度は必ずしも比例的ではなく、スコリア堆積域では少なくとも数百年、溶岩流の例では1万年程度の間、植生構造への影響が認められる場合がある。今後は斜面の形態や構成物質と植生構造との関係を生成年代との関係において整理していく必要がある。
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