Research Abstract |
本年度は,東京都足立区を事例として,建物レベルでの道路属性を考慮しない最短道路距離による生活関連施設や交通施設への近接性の測定とその空間的変動を考察した.生活関連施設としてはコンビエンスストア,スーパーマーケット,小学校,内科医院を,交通施設としては駅,バス停,前面道路の幅員を取り上げた.建物の形状が1棟ごとに表示されているデジタルマップ2500((株)昭文社)を利用して,GIS上で143,225棟の建物の中心点を発生させ,それら中心点から7施設への最短道路距離を計測し,近接性を測定した.そして建物ごとに近接性の総合得点を求め,建物レベルの近接性と町丁目レベルの近接性を比較した.その結果,町丁目内で近接性が悪いから良いまで大きく相違する(標準偏差が1を超える)町丁目が,足立区の町丁目の約35%となった.また,町丁目レベルでの測定で近接性が普通である町丁目ほど、町丁目内の建物レベルでの近接性の内部変動が大きく,誤評価の割合が高かった.以上より,従来行われていた町丁目レベルでの近接性の測定,すなわち,町丁目の内部では施設への近接性が均一的であると仮定する方法では,近接性の実態を十分に捉えることができないことが明らかになった. 次に,道路属性を考慮した場合の近接性を測定するための準備として,足立区の車両渋滞,ぬけみち,道路幅員のデータを収集し,道路属性の空間データベースを作成中である.道路幅員のデータは,前述の近接性の測定でも利用した.道路属性が不明な部分を調査するために,GISソフトウェアのArcGISと連動性が高いArcPadにGPSを接続して,道路属性情報とその位置データをシェープファイルで取得し,サーバーに送受信できるようにした.また,道路属性データを収集し,さらにそのデータを使用して近接性の空間分析を実行するシステムをVBA(Arc Object)で作成中である.
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