Research Abstract |
本研究の目的は地理教育の立場から,(1)児童・生徒が大人になり社会で生きるために必要とされる地理的技能とはどのような構造を持つのか,(2)社会が地理教育に期待する地理的学力はどのような構造を持つのか,それらを解明するとともに,(3)アメリカ合衆国・イギリス・日本のすぐれた地理教育実践事例を収集,分析することにより,日本人の地理的技能や地理的学力を向上させるための小・中・高等学校での授業開発とカリキュラム開発を行うこと,以上3点である。 本年度は研究分担者2名がアメリカ合衆国で,2名がイギリスにおいて地理教育に関する授業観察・意見交換・教材収集を実施した。 アメリカでは,マサチューセッツ州ボストンのハーバード大学教育学大学院附属図書館およびボストン大学附属図書館等を訪問し,地理的技能・学力の育成に関する資料を収集した。また,ミネソタ州セントポール周辺の初等学校や教材販売所を訪問し,授業観察・資料収集を実施した。さらに,ミネソタサイエンス博物館及びミルシティ博物館でも資料収集した。この結果,初等教育段階においては地理教育を根幹にすえた充実した指導が行われていること,教材の作成にあたって教育団体,地理学団体が連携してカリキュラムづくりや教材作成が行われていることが明らかになってきた。 イギリスでは先ず,サウサンプトンの陸地測量部(英国における地図作製機関)を訪問し,地図教育担当職員から地図を活用した地理教育実践にむけた諸活動の実態を調査した。また,ロンドン周辺の初等学校1校,中等学校2校で授業観察・資料収集を実施し,ICT(情報コミュニケーション技能)の活用や思考力を重視した地理教育実践の実態を知ることができた。同時に,滞在したロンドン大学教育研究所地理教育教室スタッフとの意見交換からは,地理的技能・学力に関する英国地理教育界での基本的考え方が理解された。
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