Research Abstract |
土壌や泥炭層の放射性炭素(^<14>C)年代は,土壌有機物の閉鎖系の成立が曖昧なため,地質学・年代学的解釈が不明確であると考えられている.この研究では,テフラに挟在される土壌や泥炭層について,加速器質量分析(AMS)法により^<14>C年代を測定すると共に,炭素・窒素含有量や堆積物密度の垂直変化を明らかにした.これらの現地調査と室内分析から,土壌や泥炭層のもつ堆積および有機物の集積という2つの側面を区分する方法を確立し,土壌や泥炭層の^<14>C年代の地質学・年代学的解釈を高精度化する糸口を探った. 本年度は,九州の樫原湿原や桜島,雲仙,由布岳および関東の浅間山火山周辺で土壌および泥炭層の地質学的調査を行い,^<14>C年代測定などの分析用試料を採取した.現地においては,テフラと挟在する土壌や泥炭層の堆積・撹乱構造を詳しく観察した.分析用の試料を7ccのキュービックを用いて連続的に採取した.室内では,^<14>C年代に加えて,堆積物密度,含水率,含泥率,鉱物組成,炭素・窒素含有量を測定した.^<14>C年代測定については,福岡大学において試料調製を行った後,タンデム加速器による測定を研究分担者の中村が名古屋大学で実施した.その他の分析は,研究代表者が福岡大学で行った.年代測定用試料の観察やテフラの同定のために,実体顕微鏡ならびに偏光顕微鏡を福岡大学に設置した.その結果,土壌試料については,土壌層の累積と有機物の閉鎖系の成立には時間差を見積もる必要があり,由布岳周辺の完新世腐植質土壌層では約1900年の時間差が認められた.
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