2006 Fiscal Year Annual Research Report
近年の大河川からの土砂流入急減に伴う黄海西部の堆積環境変動に関する数値的研究
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17510010
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上原 克人 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (80223494)
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Keywords | 東シナ海 / 長江 / 堆積物輸送 |
Research Abstract |
2年目にあたる平成18年度は、調査対象年を当初計画の2002年単年から1997年〜2006年の10年間に拡げる一方、黄海・東シナ海陸棚上における堆積物輸送を推定する上で欠かせない海底堆積物の再懸濁発生状況の把握に的を絞って調べた。再懸濁の発生要因として潮流、波浪、流れ場の主要3要素を取り上げ、それらの相対的な寄与を推定した。加えて観測結果との比較を行い黄海堆積輸送モデル構築に必要な再懸濁発生に関するパラメタ値を決定した。解析においては各種数値モデル(潮汐、波浪、大循環モデル)出力から見積もった海底底摩擦強度を再懸濁発生の指標として用いた。今回の結果の特筆すべき点の一つは、近年発達した数値モデル技法を導入することで黄海・東シナ海のほぼ全域における底摩擦強度を、従来の研究と比較してはるかに長期間にわたり高い時間・空間分解能で提示できたことである。本研究で見積もられた底摩擦強度の時間変化は現地観測から得られた済州島沖での懸濁物濃度の変化や長江河口沖東シナ海における流速変化と非常に良く対応し、特に前者の事例に関しては、これまで発生機構が特定できなかった暴風収束後の再懸濁発生が潮流の変化に起因していたことを明確に示すことができた。黄海・東シナ海全体で見た場合、波浪は沿岸付近並びに東シナ海の水深50m〜100mの外洋に面した深い海域で再懸濁を引き起こし、衛星画像にしばしば現れる黄海南西部水深20m〜50mの内部陸棚域での再懸濁は主に潮流によって生じた可能性が大きいことを指摘した。既存の研究では堆積・再懸濁に対する潮流の効果を見積もる際に半日周潮だけを考慮していたが、本研究の結果から黄海・東シナ海の場合、堆積物の挙動を正しく見積もるためには日周潮の寄与を加味することが不可欠であることがわかった。
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