2005 Fiscal Year Annual Research Report
ため池の内部生産に及ぼす周辺植生の影響に関する研究
Project/Area Number |
17510021
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
須藤 隆一 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 客員教授 (70109916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 明子 淑徳大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90348350)
田中 仁志 埼玉県環境科学国際センター, 主任 (40415378)
木持 謙 埼玉県環境科学国際センター, 主任 (50415379)
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Keywords | ため池 / 森林植生 / 落葉 / 水質 / 水圏生態系 |
Research Abstract |
湖沼などの閉鎖性水域では、周辺環境に依存した水質や水圏生態系が構築されると考えられる。集水域が森林である湖沼では、植生の違いにより特有の水質や生態系が構築される可能性がある。本研究の目的は、森林植生の違いが湖沼の水質及び生態系に与える影響を明らかにすることである。平成17年度は、丘陵地帯(埼玉県西部)に分布する集水域の植生が常緑針葉樹(主としてスギ・ヒノキ、以下、針葉樹という)又は落葉広葉樹(主としてクヌギ・コナラ、以下、広葉樹という)が優占するため池の調査を行った。さらに、針葉樹(スギ)及び広葉樹(クヌギ)の異なる樹木のリター(落葉)がため池に落下し、直接的に水質に及ぼす影響を明らかにするために溶出実験を行った。その結果、次の点が明らかになった。 1)夏季〜秋季において針葉樹及び広葉樹の優占するため池の水質を比較すると、後者の方が溶存態炭素(DOC)濃度及びクロロフィルa(Chl-a)濃度が高かった。また、溶存態窒素(DIN)の形態別存在割合を比較すると、広葉樹のため池では亜硝酸・硝酸態窒素(NO_2-N+NO_3-N)よりもアンモニウム態窒素(NH_4-N)の割合が大きく、針葉樹のため池ではNH_4-NよりもNO_2-N+NO_3-Nの割合が大きい傾向が見られた。 (2)スギ及びクヌギのリター溶出実験の結果、双方でNO_2-N+NO_3-N及びNH_4-Nが溶出したが、スギよりもクヌギの方がNO_2-N+NO_3-NよりもNH_4-Nが多く溶出した。乾燥重量1gあたりの溶出DINとしては、スギよりもクヌギの方が大きい値となった。また、スギよりクヌギの方が溶出DOC量は大きく、有機物が溶出しやすいことが分かった。 (3)実ため池における調査結果及びリター溶出実験を合わせて考察すると、植生が広葉樹と針葉樹のように違うため池では、植生の違いはため池に異なる水質をもたらす重要な環境因子である可能性を示唆している。
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