2005 Fiscal Year Annual Research Report
メダカの環境汚染物質誘発肝癌における発癌メカニズムの分子生物学的検証
Project/Area Number |
17510028
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
土田 修一 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 助教授 (20217326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 隆彦 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 教授 (70060530)
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Keywords | メダカ / 環境汚染物質 / β-カテニン / 肝癌モデル / 分子腫瘍学 |
Research Abstract |
化学物質により誘発されるメダカの肝腫瘍モデルにおける人で報告されている腫瘍関連遺伝子の関与を明らかにすることを目的に、今年度はβ-カテニンに注目して解析を進めた。cDNAクローニング法によりメダカ組織に発現するβ-カテニンのクローンを検索したところ2種類の分子が得られた。2つのクローンはそれぞれ2352および2325塩基対のORFを有し、それより予測されるアミノ酸配列はヒトのβ-カテニンと比較してそれぞれ95%および87%の相同性を認めた。またメダカのクローン間では86%の相同性が認められた。2つのβ-カテニンタンパク質の機能的な差異を検討する目的でその臓器別発現をRT-PCR法によりメダカの肝臓、腎臓、腸管、卵巣、精巣、筋肉、脳、心臓の各臓器について検討したところ、2つの遺伝子に発現量の違いが示唆されるものの、共に検査したすべての臓器に発現が認められ、発現組織に顕著な違いは観察されなかった。また、細胞内のβ-カテニン量の調節に関与していると考えられるヒトのβ-カテニン遺伝子のエクソン3領域にコード配列が存在する4つのセリンおよび1つのトレオニンはメダカの2つのクローンにおいても共に完全に保存されており、ヒトと同様な機序により細胞内β-カテニン量が調節されていると推測された。メダカの細胞内β-カテニン量の調節に関わると考えられる領域を含むメダカβ-カテニン遺伝子のエクソン構造の解析により、ゲノムDNAを試料とした細胞内β-カテニン量の調節領域の塩基変異解析が可能となった。この領域に関してN-nitrosodiethylamine(DEN)で誘発したメダカ肝腫瘍についてPCR-SSCPおよび直接塩基配列決定法により検討したが腫瘍に関連すると考えられる変異は見出されていない。さらにタンパク質レベルでのβ-カテニンの蓄積を検討する準備を進めている。
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