2007 Fiscal Year Annual Research Report
脳発達への環境化学物質の影響を調べるin vitroスクリーニング系の開発
Project/Area Number |
17510059
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
黒田 純子 (木村 純子) Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (20142151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 功 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (30124415)
黒田 洋一郎 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (30073084)
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Keywords | 環境 / 脳、神経 / 発達・分化 / 環境化学物質 / PCB / 神経毒性 |
Research Abstract |
今年度は、ヒト脳内で最も高濃度、高頻度で検出される水酸化PCB187の脳発達への影響を中心に研究を進めた。これまでに水酸化PCB187はマウス小脳培養系において、甲状腺ホルモン阻害効果を示さないが、脳発達の基本であるシナプス形成を低濃度においても阻害し、高濃度で、programmed cell deathを起こすことを報告してきた。この原因を調べたところ、以下の結果を得た。 1.マウス小脳培養系を用いた水酸化PCB187のミトコンドリア機能阻害 水酸化PCB187をマウス小脳培養系に添加すると、100nM以上の濃度で30分後、ミトコンドリア膜電位が有意に低下することがわかった。ミトコンドリア膜電位は、生存に必須なATP産生能に依存しており、水酸化PCB187がミトコンドリア機能を阻害していることを表している。さらに短時間で効果のない低濃度(1nM)で2週間培養すると、有意にミトコンドリアの膜電位が低下した。以上のことから、水酸化PCB類は、その化学構造によって、甲状腺ホルモン機能を阻害したり、ミトコンドリア機能を阻害することにより、脳発達に影響を及ぼす可能性が示唆された。ミトコンドリアはエネルギーを多く必要とする神経系では特に重要であり、パーキンソン病をはじめ神経系の重要な疾患で関連性が指摘されており、シナプス形成の関わりからも重要な知見であると考える。今後研究を進めたい。 2.環境化学物質の脳発達へのスクリーニング系の確立 3年間の研究から、環境化学物質の脳発達への影響を調べるには、齧歯類初代脳培養を用いたシナプス形成を指標とした一次スクリーニング系が最適との結論に達した。齧歯類脳培養の結果をそのままヒトへ当てはめることはできないが、莫大な種類の環境化学物質の神経毒性には多様な経路があり、感度の高い再現性のあるスクリーニング系は重要である。この系の確立をさらに進めたい。
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Research Products
(3 results)