Research Abstract |
平成18年度は,鉄鉱石に木炭,プラスチック(ポリプロピレン)および食品廃棄物を混合し、それを加熱して還元鉄が得られる条件を実験的に探索した.また,実験で得られた還元鉄の中で目視および磁石との反応が良好な物に対して分析(顕微鏡による断面観察,EPMA分析,化学成分分析)を行い,製造された還元鉄の性状を調査した.以下に得られた新知見を示す. (1)炉内に空気が存在すると,還元剤(廃棄物)と空気中の酸素が優先的に反応を行うため,製造される還元鉄の性状に大きなばらつきが見られた.空気を遮断して実験を行うと,安定して還元鉄を得ることができた. (2)空気を遮断し,還元温度が1400℃、鉄鉱石と木炭の混合比率が11:9〜1:1という条件において,目視および磁石との反応が最も良好な還元鉄が得られた.これを分析した結果,化学分析ではメタルFeが94.67%,炭素3.24%,酸化鉄0.10%であった.また,EPMA分析から,酸素と炭素が鉄内にほぼ均一に分布していることも明らかになり,良好な還元鉄であることが分かった. (3)プラスチック(ポリプロピレン)と鉄鉱石を混合して加熱した結果,プラスチックが還元反応前に気化し,鉄鉱石を還元することができなかった. (4)食品にも炭素が含まれていることから,乾燥させた食品廃棄物を還元剤として使用した結果,良好な還元鉄が得られた. 以上の結果から,廃棄木材や木炭を用した還元鉄製造方法はほぼ目処が立ったと考えている. 一方,最近になって廃棄物処理法が改定になり,食品廃棄物の入手が容易になってきた.食品の多くは炭素を多く含むことから,乾燥させれば,上述した予備実験のように,鉄鉱石の還元剤として使用できる可能性が高い.そこで,次年度は,食品廃棄物を還元剤の1つとして積極的に採用し,還元鉄製造の研究を発展させる予定である.
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