2006 Fiscal Year Annual Research Report
ITシステム化による看護労働の変容と医療事故防止策の有効性に関する研究
Project/Area Number |
17510142
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Research Institution | The Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
内藤 堅志 (財)労働科学研究所, 研究部, 研究員 (70390771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前原 直樹 財団法人労働科学研究所, 所長・研究主幹 (60165660)
飯田 裕康 財団法人労働科学研究所, 研究部, 研究主幹 (70072650)
阿部 眞雄 財団法人労働科学研究所, 研究部, 特別研究員 (40266359)
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Keywords | 情報システム / 看護労働 / コミュニケーション |
Research Abstract |
病棟での看護師を対象にした業務観察、職員へのヒアリング、対象病棟で発生した事故事例調査を行い、ITシステム導入による看護労働の変容と事故防止について検討した。 その結果、オーダリングシステムと電子カルテシステムがシームレス構造ではなく情報伝達、保存がスムーズでないこと、看護師間及び看護師と他職種間の不十分なコミュニケーション・連携不足により注射・点滴及び内服与に関連する事故が発生していた。具体的な事故発生要因として、事故事例26例中、処方箋、看護記録などの確認のしにくさに関するものが7事例、オーダリングシステムと電子カルテシステム間の相互運用の不備に関するものが2事例、オーダリング・電子カルテシステムに不慣れに関するものが4事例みられた。 一方、倒転落に関しては、患者の病態や年齢などのリスクの程度に応じた患者の情報が看護師間、看護師と他職種間において電子情報、紙ベースの情報、口頭による情報のいずれにおいても、効果的に伝達・共有化されていなかった。したがって、伝達・共有される患者情報自体が蓄積され、活用されるようなシステムの構築が必要であると思われた。このことは、転倒転落の事故防止に代表されるケア面での医療・看護質の向上にも欠かせないと考えられた。そのために、電子カルテへの入力・記載に際しては、スペースの改善や記載内容の改善など、蓄積情報の活用を前提とした工夫が必要であると思われた。 対象病院では看護・医療実践での情報伝達・共有システムの中心は、オーダリングと電子カルテのシステムにより担われていた。これらのシステム間の相互運用性の低さや操作性の不備により、医療者間のコミュニケーション・連携の不十分も発生していた。したがって、オーダリングと電子カルテの相互運用性の促進は、指示情報を正確かつ効率的に伝達するという安全なIT化のためだけでなく、医療者間の良好なコミュニケーション・連携を促進する上でも重要と考えられた。
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