2006 Fiscal Year Annual Research Report
児童虐待を防止する包括的社会制度の設計-社会の安全・安心のための政策提言-
Project/Area Number |
17510143
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Research Institution | National Institute of Science and Technology Policy |
Principal Investigator |
牧山 康志 文部科学省科学技術政策研究所, 第2調査研究グループ, 客員研究官 (50356284)
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Keywords | ガバナンス / 政策科学 / 社会福祉関係 / 児童虐待 / 安全・安心 / 中間的専門機関 / ネットワーク / リスクマネジメント |
Research Abstract |
児童虐待は、保護する立場の大人(強者)が子ども(弱者)に行う暴力であり、家庭という身近な空間、育児という普遍的な営みの中で、文化的背景・社会的理念・社会構造と個別的な多様な要因が、交錯しつつ発生するといえる。当該の家庭がなぜ孤立するのか、社会からの支援がなぜ届かないのか、大人のストレスがなぜ子どもを犠牲に発散されるのか、社会は一人の子どもを親に代わってどこまで適切に育成できるのか、そもそも私たちの社会において大人は「子ども」をどう位置づけ、その存在や人権と大人それぞれが対峙しているのか。虐待問題では、根本理念から眼前の虐待解決の方策まで、一貫した十分な施策が子どもを虐待から救う社会のあり方を問われている。 例えば虐待を招く家庭の孤立防止には、市町村レベルの地域育児支援や各戸別対応が重要な施策の柱となるが、その際、公共政策の家庭内への積極的アプローチが、一面において個別的快適を保障するプライバシーと対立し、子どもの生命・人権の保護と一般成人市民の権利との軋轢を生むことになる。こうした場合、国家レベルでの基本理念、法制度による合理的解消が必要になる。また、虐待に係る情報を、市町村と県レベルの児童相談所、さらに警察・学校等と、地域ネットワークで共有する「情報の空間的・時間的連続性」が重要である。他方、誰が(いかなる機関が)そのケース(事例)について継続的に一貫した責任・権限をもち、戦略の全体を適正にコーディネートし、主導的役割を発揮するのかの明確化が問題となる。また、リスクアセスメントを踏まえた高度の判断や虐待者の更正、家族再生プログラムの実施では、時に現場や非専門家担当者のみでは手に余る場合もあり、対応には専門性と組織的・制度的な枠組みが必要となる。本調査研究では、これら諸課題に対する解となる統合的な制度・機関の姿を、ガバナンスの視点から「中間的専門機関」を核に検討している。
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