2006 Fiscal Year Annual Research Report
φX174ファージ感染を司るスパイクHタンパク質の機能と構造
Project/Area Number |
17510177
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
稲垣 穣 三重大学, 大学院生物資源学研究科, 助教授 (20242935)
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Keywords | bacteriophage φX174 / spike H protein / lipopolysaccharide / conformational change / interaction / V8 protease / limited chemical degradation / protease-resistant domain |
Research Abstract |
φX174ファージのスパイクHタンパク質は、宿主菌表面のリポ多糖(LPS)を認識すると共にファージ遺伝子を菌体内に運ぶ役割を持つと考えられてきた。平成17年度は,Hタンパク質がLPSと結合して立体構造が変わる際にLPSの脂質部分が重要であることを明らかにした。また,Hタンパク質をV8プロテアーゼで処理すると二つの断片に分かれることが判った。平成18年度は,以下の研究を行った。 リン酸残基やKDOのカルボキシル基の除去したLPS誘導体とスパイクタンパク質の相互作用解析 LPSをフッ化水素酸で処理して,脱リン酸LPSおよび,さらに水溶性カルボジイミドと水素化ホウ素ナトリウムで処理して,脱リン酸・KDO還元LPSを調製して、HおよびGタンパク質との相互作用を調べた結果,Hタンパク質の相互作用と立体構造変化には,KDO残基とリン酸残基の両方が関与し,いっぽう,Gタンパク質では,KDO残基の関与がとても大きいことが判った。 LPS含有単分子膜を利用する表面プラズモン共鳴法の検討 金薄膜に疎水性の表面を調製したBIACORE社のHPA基盤に対して,PC:PE:PG=2:1:1の組成を持つリン脂質混合物を使って調製した小型リン脂質リポソーム(SUV)にLPSを混ぜ込む方法で,LPSを含有する単分子膜を基盤上に安定に固定化することができた。そこへ,スパイクタンパク質やφX174ファージを注入すると特異的な相互作用を検出することに成功した。ウイルス粒子のLPS含有単分子膜に対する親和性は,二つのスパイクタンパク質よりも桁違いに高かった。 Hタンパク質の中のプロテアーゼ耐性ドメインの特定 V8プロテアーゼによるHタンパク質の限定分解によって得た二つの断片(F2およびF3)をSDS-PAGEゲルから疎水膜に転写して,N末端アミノ酸配列解析を行ったところ,F2断片は,Hタンパク質の215番目のアスパラギンからC末端345番目までの131残基の断片であり,F3断片は,N末端メチオニンから102番目のグルタミン酸までの102残基の断片であることが判った。今後,これらの断片を大量に調製し,そこから単離精製を行って,LPSとの相互作用を検証する必要がある。
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