2005 Fiscal Year Annual Research Report
野生アカウミガメの受精卵を移植した場合の孵化率低下原因の解明
Project/Area Number |
17510195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
土井 守 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60180212)
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Keywords | アカウミガメ / 受精卵 / 移植 / 性ステロイドホルモン / 発生過程 / 卵殻の白濁現象 |
Research Abstract |
和歌山県日高郡みなべ町千里の浜に上陸した雌アカウミガメ3頭から採取した60個の卵を用いて、1)孵卵後期以降の転卵処理による発生率および孵化率の変化と最適な移植時期の検討、2)発生の進行に伴う胚の固着と卵殻の白濁現象の関係、3)SDS-PAGEによる発生過程の卵白タンパク質の変化の解析、4)姫路市立水族館の雌雄アカウミガメの繁殖生理に関する内分泌学的研究と飼育水温との関係についての研究を実施した。 1)孵卵後期である孵卵40日目以降に受精卵を転卵したところ、すべての実験区で孵化がみられた。従って、孵卵後期での移植は発生の進行に全く影響を与えないことが分かった。 2)通常の孵卵条件下で孵卵を行ったところ、胚は卵殻上部の位置で固着せず、孵卵15日目においても卵殻下部の位置で胚が卵殻(膜)に固着し発生が進行している状態が観察できた。一方、卵殻頂点部を中心にして時間の経過とともに卵殻の白濁が拡大した。これまでの報告では、孵卵中の胚が固着した卵殻の位置から卵殻の白濁が進行すると言われてきたが、胚の固着した位置と卵殻の白濁開始する位置は異なり、相互関係がないものと考えられた。 3)SDS-PAGEにより、産卵前の受精卵や発生開始した卵の卵白を用いて卵白タンパク質を解析したが、分子量16,000または30,000〜40,000のタンパク質が経時的に変化していたが、それらのタンパク質を特定できなかった。 4)野生下での産卵開始時期よりも前に飼育下の雌個体で血中エストラジオール濃度が高まり、その後プロジェステロン濃度が高くなる傾向が認められたが、産卵は起こらなかった。また雄個体では、血中テストステロン濃度の顕著な年周期が認められた。さらに、雌の血中エストラジオール濃度と雄の血中テストステロン濃度は、飼育水温の下降に伴いともに上昇し、水温の上昇に伴い減少する傾向が明らかとなった。
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