2006 Fiscal Year Annual Research Report
「近代国家」のフロンティアとインターフェイス:辺境における商品・人・知の回路
Project/Area Number |
17510210
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
川名 隆史 東京国際大学, 経済学部, 教授 (60169737)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 愛理 東京国際大学, 商学部, 教授 (50166584)
内田 日出海 成蹊大学, 経済学部, 教授 (90223560)
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Keywords | 地域研究 / 思想史 / 文化人類学 / 経済史 |
Research Abstract |
近代国家の周縁に取り込まれた辺境の意味を、外の世界へのインターフェイスとして捉えようとする共通の問題意識に基づき、三名はそれぞれのフィールドで以下のような研究を行なった。 川名は、「ポーランド分割」以前のポーランド国家においてユダヤ人がポーランド社会内部の「理念的辺境」として地歩を固めていった過程を、「ユダヤ人特権」の変遷の歴史の中に見て、それを資料的に精査した。また同時に同じ視点をポーランド内の諸民族および諸宗派にも広げ、互いに比較することで、共生空間としてのポーランド国家の内部に存在する諸要素が、国家の有機的成分でありつつ、同時に学問、通商、信仰など様々な経路を通じて外部世界とのインターフェイスの役割を担っていたことを確認した。 田村は、イスラーム世界の中のユダヤ教徒の聖人信仰と、イスラーム教徒の聖人信仰の祭礼構造が相互浸透している様態に着目していたが、さらに昨年度は地中海を隔てたシチリアの聖人信仰を調査し、キリスト教社会でもこの祭礼構造が共有されていることを見出した。従来の研究では土俗的信仰形態の残存として取り扱われてきた、文明の境界空間におけるこれらの混成的様相は、異文化境界における断層構造ではなく、相互浸透的なインターフェイス的構造を示唆していると思われる。 内田は、スイスに隣接するフランスの「辺境」が、とくに19世紀〜20世紀の国際政治の激しい変動局面を経てどのような経済的影響を蒙ったのかを追究した。その結果ジュネーヴに接するジェクスとオート・サヴォワでは越境の経済活動を常態として許すフリー・ゾーンという特殊な制度が残存し、高い関税障壁の時代にもスイスとの自由貿易を享受していた点を実証した。また北方の国境においては、スイス人が地代や十分の一税徴収権を通じてアルザスと有機的な経済関係をきずきあげてきたことを明らかにした。
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Research Products
(1 results)