2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
千葉 胤久 北海道教育大学, 教育学部旭川校, 助教授 (90333765)
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Keywords | 現象学 / 死 / 死生観 / フッサール / ハイデガー / フィンク |
Research Abstract |
フッサールは超越論的自我の不死性を主張しているが、それは、超越論的自我は「構成する者」としてそれ自体は時間的に「構成される者」ではありえず、それゆえそれは始まることも終わることもありえない、ということを意味する。これに対して、フィンクは、空間を与え時間を放つ時空の遊動、すなわち世界(という世開すること)は生成消滅せず、始まることも終わることもありえない、と主張する。ここに超越論的主観性の現象学から非主観的現象学への展開を見て取ることができる。この展開において、「超越論的自我」は絶対的に匿名的な「時間化すること・流れること」として、さらには「遊動すること」として解釈し直され、「不死性」はそうした「流れること・遊動すること」の無窮性として解釈し直されることになる。 では、現象学において積極的に問題化されうるのは不死性のみであって、死は問題とされえないのか。もちろんそうではない。非主観的現象学への転換、これを促したのはハイデガーの世界内存在の議論であるが、その世界内存在には、それに全体性と本来性をもたらすものとして「死(への先駆)」が不可欠な形で含まれている。後の彼の、存在における露現と伏蔵(生と死)の同時生起の思索のうちにも、存在者が存在の明るみへともたらされて現出することにとって不可欠の動性の一方として、死に積極的な性格が認められる。これに対して、フィンクはさらに深く死の問題を追求する。彼は死が「現出世界からの退去」であり、「世界内存在全体の消去」であることを繰り返し強調する。この死は、現出すること・存在することを可能にする死ではなく、現出することを絶対的に不可能にする死である。フィンクは、主にこの後者の次元に定位して死を論じており、ここに、死の無性・否定性に関する、より徹底した思考を見出すことができる。
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Research Products
(1 results)