2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520002
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
千葉 胤久 Hokkaido University of Education, 教育学部, 准教授 (90333765)
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Keywords | 現象学 / 死 / 死生観 / ハイデガー / フィンク |
Research Abstract |
平成19年度は、「世界が世開するはたらき・現出することそのこととしての世界」と「現出すること(世界が世開するはたらき)に与りえなくなることとしての死」とを基本要素とする現象学的死生観に関して、従来の死生観において語られてきた「自然・宇宙への帰一・融合としての死」という見解との比較検討を通じて、その射程を明らかにする考察を行った。この考察においては、従来の死生観において「自然・宇宙」として語られてきた事柄を「世界が世開するはたらき」の観点から捉え直し、「帰一・融合」を「現出することに与りえなくなること」の観点から捉え直す作業を行い、そのことを通じて、具体的には、以下のことを明らかにすることができた。 (1) 死を無として直視することによって、かえって「いまここに生きてあること」を驚くべきこととして深く味わうことができるようになるという、ハイデガーに見られる死生観と同種のものを、現代日本において独自の生命学を展開している森岡正博の死に関する議論や科学的な精神の持ち主であった岸本英夫の死生観のうちにも見出しうるということ。 (2) フィンクのうちに見出すことのできる、「現出することそのこととしての世界」において「現出することに与りえなくなることとしての死」という現象学的死生観と、磯部忠正らの指摘する「顕幽連続観」、「大きな自然のいのちのリズムに従うという日本人の生き方」との間に構造的な同一性を見出すことができるということ。 こうした考察を通じて、現象学的死生観と日本的な死生観・現代的死生観とを総合的に理解しうる視座を獲得することができたということができる。
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