2007 Fiscal Year Annual Research Report
プラトン哲学の基底における構成的要因としてのソクラテス以前哲学について
Project/Area Number |
17520007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三浦 要 Kanazawa University, 文学部, 助教授 (20222317)
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Keywords | プラトン / パルメニデス / ヘラクレイトス / ソクラテス以前 |
Research Abstract |
今年度はまず、パルメニデスの存在論が、プラトンの『ソピステス』においてどのような形で保存されているのかという点を考察した。プラトンは、先人の見解の吟味批判を通じて、「有」をいかにして問うべきかを示した。「有る」(einai)の意味は、「物体」や「形相」の中へと求められるが、結果としてta ontosonとしての形相が対象として残り、しかもその中でも特に「有」「同」「異」の三者が重要なものとして取り出される。そして、「有る」ということが、これら三者の関与によって成立していると分析される。これは、明らかにパルメニデスの示した実在規定に沿うと同時に、パルメニデスにおいて曖昧なままであった「述定」の否定と非存在の関係を明白に規定するものである。そして、プラトンはさらに、「イデアが真の実在である」と主張する場合、パルメニデスの規定を遵守するだけでは解消され得ず、さらにはこれら三者の関与を語ることでも解くことのできない問題に気づいていた。「善」である。「本当に有る」とは、善による秩序付けのもとで、諸形相が相互に関与することで説明される事態である。プラトンの「有」論はパルメニデスの存在論を基底にしつつも、そこに含まれる限界を明示するとともに、プラトン独自の方法でその存在論を展開していったのである。 また、これに引き続いて、ヘラクレイトスとプラトンとの関係について考察した。プラトンがいわゆる万物流転説をヘラクレイトスに帰している『テアイテトス』はヘラクレイトスの実際の見解と齟齬を来しているかのように見えるが、実際にはプラトンはヘラクレイトスの主張の主旨を正確に理解している。つまり、ヘラクレイトスは、自然万有は、川の流れのように構成要素の永続的変化を内包しつつ全体として一本の同定可能な川の様にその統一性を保っていると主張しているのであり、プラトンは単純にヘラクレイトスを批判している訳ではないのである。
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Research Products
(2 results)