2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520009
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
今泉 智之 三重大学, 人文学部, 助教授 (30322978)
|
Keywords | 哲学 / 西洋古典 / プラトン / 『テアイテトス』 |
Research Abstract |
本研究の目的は、『テアイテトス』において知覚、判断、思考、考察、知などの能力が、外界を認識する際それぞれどのような役割を果たすと考えられているのか、またこれらの能力は美醜善悪などの価値の把握にどのように関わっているのかを明らかにすることである。本年度はまず『テアイテトス』第一部において知覚、判断、思考、考察などの言葉が現れる箇所をあらためて読み直し、それぞれの語がどのような意味で使われているのかを検討した。その過程で浮かび上がってきたのが、第一部の中程に現れる、「神に似ること」という考え方が語られる議論(172c-177c)をどのように解釈するかという問題である。その議論についてはこれまで、『テアイテトス』の本題とは無関係、あるいはそこに示されている哲学者のあり方はプラトン本来のものではない、などと解釈されることも多かった。しかしその議論において思考、考察などの語は、第一部の他の箇所と同様、知覚よりも上位にあり、また美醜善悪などの認識に関わるものとして用いられている。したがって、こうした従来の解釈には疑問の余地があるということになる。第一部全体を精読したうえでこのことを明らかにしたのが本年度の第一の成果である(「『テアイテトス』における「神に似ること」の射程」)。 次にその成果を踏まえて、「神に似ること」が語られる議論の内容は、『国家』『饗宴』など、プラトンの他の著作で示されている考え方とどのように連関しているかを、より広い視野から検討した(「人間の有限性と神--プラトンに即して--」)。これが本年度の第二の成果である。
|
Research Products
(2 results)