2006 Fiscal Year Annual Research Report
哲学の古典的素型とその変容-ヘレニズム的なるものへの新視座を求めて
Project/Area Number |
17520011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内山 勝利 京都大学, 大学院文学研究科, 名誉教授 (80098102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中畑 正志 京都大学, 大学院文学研究科, 教授 (60192671)
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Keywords | 古典 / 変容 / プラトン / 対話 / アリストテレス / ブレンターノ / 受容史 |
Research Abstract |
本年度は研究年度の最後にあたるため、内山と中畑がそれぞれの役割分担の遂行に努めるとともに、内山がそのとりまとめにあたった。 内山は、第一に初期ギリシア哲学のうちに「哲学の古典的素型」の一つの形を見出すことにつとめ、そのためによい手がかりとなるカークらの共著『ソクラテス以前の哲学者たち』の翻訳を共同で公刊した。また、これまでの研究をさらに補足する形で、プラトンの作品の対話というスタイルが哲学の古典的素型としてもつ意味を、後期の対話篇を射程に入れてに見届けた。 中畑は、主としてアリストテレス哲学における「素型と変容」の問題を追及した。具体的には現代哲学のタームである「志向性」をめぐって、その概念の導入者と言えるブレンターノとブレンターノ自身がその概念の素型を見出したアリストテレスの議論を照らし合わせ、ブレンターノは正確にはアリストテレスから何を継承し何を継承できなかったのかを、「感覚されうるもの」を意味するアリストテレスのギリシア語aisthetonのブレンターノの訳し方を手がかりに査定した。その結果アリストテレスにおいては「感覚知覚対象」それ自身が因果的かつ認知構成的な力を持つのに対して、ブレンターノにおいてはそのような因果的力が捨象されているという根本的な相違を明らかにした。 内山は以上の成果を踏まえて、プラトンの作品の受容史をたどることを通じて、古典とは固定的な「素型」を構成するものではなく、むしろそれぞれの時代と場所において異なった相貌を現わし、各時代の状況を大きく揺り動かす力を示してきたものであり、新たな思想の創出を促す触発性においてその地位をたえず更新しつづけていく存在であることを確認した。
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Research Products
(6 results)