2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代ドイツの実践的自然哲学研究-新たな応用倫理学の構築をめざして-
Project/Area Number |
17520016
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山内 廣隆 広島大学, 大学院文学研究科, 教授 (20239841)
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Keywords | 自然との和解 / 自然的法共同体 / 自然的共世界 / 具体倫理学 / 比較考量 / 自然性 / 善き世界 / ユートピア批判 |
Research Abstract |
本研究は、ハンス・ヨナスに始まり、マイヤー・アービッヒに受け継がれ、ルートヴィヒ・ジープなどへ拡大していった、ドイツ実践的自然哲学の研究を目的にしている。筆者は昨年度、マイヤー・アービッヒの主著『自然との和解への道』上下二巻の翻訳を完成し、みすず書房から出版した。これはアービッヒの本邦初めての翻訳である。その点では、この翻訳は日本のアービッヒ研究の先陣を切ることになった。アービッヒの哲学については、この翻訳の巻末に付した「解説」でその概要を述べた。アービッヒ哲学は二つの部分に分けられる。ひとつは彼の自然観、人間観を論じる基礎的部分、もうひとつはそこで基礎づけられた自然観・人間観を基に展開される実践的部分である。前者は基本的にはスピノザ哲学に依拠しているので、アービッヒの哲学はデイープ・エコロジーと呼ばれることもある。この部分を理解するためのキーワードが「自然との和解」であろう。後者の「実践」を理解するためのキーワードは「自然的法共同体」である。これは、憲法で自然破壊を禁じ、それに則って現実の政策を行う国家である。このような共同体の形成が実践の目的となる。従って、アービッヒの実践とは、きわめて政治的なものである。このようにアービッヒの哲学についての大枠は、かなり明らかになってきたが、細かい部分はこれからであろう。 今年度は、ルートヴィヒ・ジープの主著を『ジープ応用倫理学』として、広島大学プロジェクト研究センターから出版した。これを基に、日本でもジープの哲学が論じられることになろう。 なお、本年度は二月に北大の国際シンポジウムに招待され、講演した。ここで、応用倫理教育の現状とあるべき姿を論じた後で、アービッヒとジープの「実践」について紹介した。いずれにしろ、本研究でアービッヒとジープ哲学を研究するための地盤は形成された。しかし、細かい研究はまだまだこれからである。
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Research Products
(4 results)