2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520020
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
田中 朋弘 Kumamoto University, 文学部, 教授 (90295288)
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Keywords | 専門職 / 準専門職 / 専門職の社会的地位 / 道徳的基礎づけ / 自律性 / 専門職化 |
Research Abstract |
本研究の最終年度である平成19年度は、以下の二つの問題軸を立てて検討を進めた。まず第一は、「専門職」の「社会的地位」とその根拠についてである。具体的には、近代イギリスの医療専門職の展開状況を、カー・ソーンダース(Carr-Saunders, et. al.)らの研究を初めとする社会学的アプローチと、パーキン(Perkin)らを初めとする歴史学的なアプローチの両方から検討した。その結果明らかになったのは、近代イギリスにおいて専門職が社会的地位を確立できたのは、専門職の職務内容の専門性のみならず、ジェントルマンという社会的地位にもよっているということである。「地位専門職」と「職業専門職」というよく知られた一般的な区別を理解するためには、こうした媒介的価値が必要である。また第二は、専門職の自律性という点の考察である。医師の自律性とは、1. 医師が治療方針などを選択する自由、2. 法律や道徳、集団的な自主規制に従う規範的態度として理解できる。ここでは、治療の医師の判断をめぐる三つの事例をとりあげ、それらが、個人としての医師と、組織としての医療機関、医師の専門職集団、社会などとの関係において、どのようにして自律的であり得るのかを検討した。そこで確認されたのは、裁量の自由としての自律性と自己規制としての自律性とが、元々、専門職集団の統制によって基礎づけられているということである。そうした自主的コントロールがうまく機能しない場合、国家が医療を直接にコントールしなければならなくなる。本研究全体を通しては、「専門職倫理の道徳的基礎づけ」について考察するために、「専門職の特徴」、「専門職と準専門職」、「専門職化をめぐる諸問題」、「専門職の自律性」、「専門職の社会的地位」などについての検討を行い、専門職倫理が、社会的-道徳的関係性の中で意味づけられ、社会的に承認されているという点を明らがにした。
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Research Products
(3 results)