2005 Fiscal Year Annual Research Report
ハイデガー哲学における他者論の可能性と看護理論への応用についての研究
Project/Area Number |
17520023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
池辺 寧 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00290437)
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Keywords | ハイデガー / 気づかい / 時間性 / 他者 / ベナー / 看護理論 / カント / 医療者-患者関係 |
Research Abstract |
1.本研究を進めていくにあたって特に着目したいのは、ハイテガーが用いる気づかいという概念である。ハイデガーは現存在(人間存在)の存在を気づかいとみなし、気づかいの意味を時間性と捉えている。そこで研究初年度である本年度はまず、ハイデガーの時間論の研究に取り組み、彼の時間論が、他者との本来的な関わり合いのための分析にもなっていることを示した。この研究成果の一部は平成17年8月に行われた広島倫理学会において、「ハイデガーの時間論」という題目で口頭発表した。 2.ハイデガーから強い影響を受けている看護学者ベナーによれば、看護実践における重要な観点の一つは、個々の患者の生活史に根ざした、その患者だけに開かれている個別的で具体的な可能性を見極めることである。ベナーの看護理論は、ハイデガー哲学を看護理論へと応用していくにあたり、示唆に富む。今年度はベナーの看護理論の研究に取り組んだが、ハイデガー哲学と関連づけていくことが次年度以降の課題である。 3.今年度は、ハイデガーが強い影響を受けているカントにも着目し、人間の尊厳や義務などを手がかりにして介護の理念の基礎づけを試みた(「カント倫理学から見た介護の理念」、『介護福祉思想の探求』所収、ミネルヴァ書房、近刊)。 4.医療行為は医療者と患者の間で繰り広げられる相互行為である。そこで今年度はまた、身体を生きる、共同作業、信頼などの観点から医療者-患者関係についても考察した(「医療者-患者関係を考える」、『奈良県立医科大学医学部看護学科紀要』第2号)。特に、ハイデガーから着想を得た「身体を生きる」という観点が、医療者-患者関係を考えるうえで重要であることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)