2007 Fiscal Year Annual Research Report
ハイデガー哲学における他者論の可能性と看護理論への応用についての研究
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17520023
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
池辺 寧 Nara Medical University, 医学部, 講師 (00290437)
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Keywords | ハイデガー / 気づかい / 時間性 / 共同存在 / 他者 / ベナー |
Research Abstract |
本年度はまず、昨年度に引き続き、気づかい(Sorge)という術語を取り上げ、時間性との関連を論じた。ハイデガーは『存在と時間』において現存在の存在を気づかいと定義し、気づかいの意味を時間性と捉えた。本来的な時間性は本来的な将来から、しかも将来的に既在しつつ、現在を呼びさますという仕方で時熟する。現在という瞬間は将来と既在性から発現する。しかも、現存在は現在という瞬間においてそのつど、その存在の終わりである。つまり、現存在は死へとかかわる存在である。気づかいという語は現存在の存在の形式的・可能的な構造を特徴づけた語であるが、死、負い目、等々、現存在の特徴のすべてを自己のうちに蔵している。ハイデガーは「気づかいは死へとかかわる存在である」と述べているが、この一文は時間性が気づかいの意味であることを端的に言い表している。 次に、ハイデガーによる共同存在の分析を検討した。現存在の世界は共同世界であり、世界を分析することのうちには他者もすでに含まれている。ハイデガーは,他者は私と同じ世界に現れるとみなしている。私と他者は同じ世界に現れるがゆえに、相互に関わり合うことができる。現存在は根源的には相互共同存在である。ハイデガーは本来的な自己を説くが、本来的な自己は他者とのあいだに本来的な関係を築くためにも必要なのであって、彼は単独の自己を志向しているのではない。ハイデガーはたしかに他者を主題として論じていないが、看過しているわけではない。現存在が他者との共同存在である以上、ハイデガーは現存在の存在を問うとき、他者の存在もつねに問うている。それゆえ、現存在の分析論は共同存在の分析論でもある。
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Research Products
(2 results)