2005 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀ドイツ哲学と「もう一つの公共性の構造転換」に関する理論的・歴史的研究
Project/Area Number |
17520030
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
加藤 泰史 南山大学, 外国語学部, 教授 (90183780)
|
Keywords | 理性の公共的使用 / 政治的なるもの / 植民地主義批判 / コスモポリタニズム / ナショナリズム |
Research Abstract |
平成17年度の研究計画にしたがって国内で収集可能な文献を購入すると同時に、ミュンヘンおよびベルリンの国立図書館とドレスデン工科大学で資料調査を行い、収集した文献・資料などを参考にしながら、カント・フィヒテ・ハーバマス・クリストドゥリディスなどのテクストに独自の分析を加えて、論文としてまとめ、加藤泰史「法的なるものと政治的なるもの--カントの「理性の公共的使用」をめぐって--」(中部哲学会編『中部哲学会年報』第37号)と、加藤泰史「カントとフィヒテ--「ナショナリズム」と「コスモポリタニズム」をめぐるカントとフィヒテ--」(日本フィヒテ協会編『フィヒテ研究』第13号)として公刊した。前者では、現代法哲学の「法的なるもの」と「政治的なるもの」をめぐる論争の観点を導入することで、カントが提起した「理性の公共的使用」が「政治的なるもの」として機能していることを明らかにした。この「公共的使用」がいかなる源泉から展開してきたのかはまだ世界のカント研究でも明確には明らかにされていないが、現在その源泉の一つをルソーの影響に定位することでこの問題を解決するための研究作業を続けており、その一部を論文にまとめる予定である。また、後者の論文では、カントの政治哲学を取り上げて『永遠平和のために』でもヨーロッパの植民地主義に対する内在的批判に「理性の公共的使用」の論理を確認することができ、それが中国および日本の鎖国政策の積極的評価につながっていることを明らかにすると同時に、その論理がフィヒテには継承されなかったことでフィヒテが「ナショナリズム」を強調するにいたったことを明らかにした。
|
Research Products
(2 results)