2005 Fiscal Year Annual Research Report
『判断力批判』の研究およびハイデッガーのカント解釈と『判断力批判』の整合性の研究
Project/Area Number |
17520031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
甲田 純生 広島国際大学, 社会環境科学部, 助教授 (30352024)
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Keywords | 時間 / 図式 / 構想力 |
Research Abstract |
本年度はカント『純粋理性批判』およびハイデッガー『カントと形而上学の問題』の研究を中心に行なった。『純粋理性批判』の研究における眼目は時間論と図式論である。カントは『純粋理性批判』において、さしあたり直観の形式として時間を導入する。しかし『純粋理性批判』の『超越論的分析論』の心臓部分をなす図式論においても、時間は重要な役割を果たしている。明らかに時間は『純粋理性批判』において、直観の形式以上のものである。このあたりの事情を踏まえて、『純粋理性批判」のA版に依拠しながら独自のカント解釈を展開しているのが、ハイデッガーの『カントと形而上学の問題』である。ハイデッガーは、構想力を「感性と悟性という幹に共通する未知の根」として解釈し、図式論の真相に迫ろうとする。時間論および図式論の中で問題となってくる認識能力が構想力であることは間違いがない。問題は、構想力の根源的性格および構想力と時間との根源的関係である。カントは『判断力批判』の中で、「われわれの表出様式は図式か象徴である」と述べている。図式はいわゆる認識に、象徴は美に対応している。象徴は『判断力批判』によれば「構想力と悟性の自由な戯れ」の産物である。この言い方に則れば、図式は「構想力と悟性の規則的な戯れ」の産物であるはずである。そして恐らく、この二つに通底する「構想力と悟性の戯れ」こそが構想力の根源的本質であり、それは時間を時間たらしめるもの(=時間性)と深い関わりをもっているはずである。そのことをカント『判断力批判』とハイデッガー『存在と時間』を視野に入れつつ考察することが、次年度の課題となる。
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