2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中西 啓子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00143743)
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Keywords | 宗密『盂蘭盆経疏』 / 伝奥 / 儒・仏二教の孝道論 / 『輔教編』 / 『十王経』 / 唐代小説における冥界観 |
Research Abstract |
本研究は唐末から北宋の慶暦年間ころまでの仏教の動向を、儒教との交渉から考察しようとするものである。本年度は、まず中唐の宗密『盂蘭盆経疏』(宗密疏とする)をとりあげ、この著述に提示されている儒・仏二教の孝道論を手がかりとして、それにまつわる諸問題を究明することに努めた。第一に、宗密疏については、五代の頃の伝奥・宋の智円・遇栄・元照・普観などが更に注釈を加えているが、これらの注釈について検討した。このうち遇栄・元照・普観の注釈は現存するため、そのなかに継承されている宗密の孝道論を点検した。また、伝奥は華厳宗の系統では注目されながらも、その事蹟についてはこれまで考察されていないが、彼が并州祁県の人で、宗密の門人潜輝の弟子であることなどが明らかになった。残存する伝奥の著述のなかに含まれている儒教や孝道の議論については調査中である。智円の注釈は亡佚したが、その内容については、日新録『蘭盆疏鈔余義』によってある程度の推測が可能であり、『閑居編』の記述などとあわせて、彼の三教論・儒仏一致論を検討中である。第二に、宗密およびこれらの注釈者たちの議論と、宋代以降に仏教側の孝道論として注目されてきた契嵩の『輔教編』や「孝論」との関わりが推測されるため、つづいて詳しく検討する予定である。以上の『盂蘭盆経』関係にくわえて、唐末から一般に流行していた『十王経』についても考察した。敦煌にはこの経典にもとづく北宋の十王地蔵図などが遺存しており、その図に描かれている四人の冥官が、晩唐から五代の官僚たちによって著された小説の世界にも出現していることを確認し、論文「唐代小説における冥界観」として発表する予定である。
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