2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520034
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中西 啓子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00143743)
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Keywords | 宋密『孟蘭盆経疏』 / 紀国寺慧浄 / 『孟蘭盆経讃述』 / 智円 / 『閑居編』 / 賛寧 |
Research Abstract |
本研究は唐末から北宋の慶暦年間ころまでの仏教の動向を、儒教との交渉から考察しようとするものである。本年度は、昨年度につづいて中唐の宗密の著述『孟蘭盆経疏』で提示されている儒・仏二教論を手かがりとして、それにまつわる諸問題を考察した。第一に、この宗密疏で「三蔵云」として引用している説を宋代の注釈者達はおおむね義浄三蔵の所説と見なしているが、唐初の紀国寺慧浄の『孟蘭盆経讃述』であることを指摘した。あわせて慧浄の他の著述についても検討し、論文「紀国寺慧浄撰『孟蘭盆経讃述』及『般若心経疏』質疑」にまとめ、第三届玄奘国際学術研討会(2006年9月、四川省成都市)で発表した。この研討会の論文集は2007年度中に出版される予定である。第二に、宋代では最初に宗密疏に対する注釈『孟蘭盆経疏〓華紗』を著した智円の儒・仏二教論について検討中である。智円の『閑居編』には、仏者でありながら儒教主体とも見なされる儒仏一致論が展開されている。その一致論の背景を探るためにも、序文以外は亡佚してしまった彼の『〓華鈔』について後の記録などから断片の収集を試みており、天台宗山外派の学匠としての彼の教学とあわせて考察する予定である。第三に、宗密疏に対する注釈者達すなわち智円・遇栄・元照・普観などの議論と、宋代以降仏教側の代表的な孝道論として注目されてきた契嵩の所説との関連についてはさらに継続して考察することとする。以上とは別に、北宋初期の賛寧の儒・仏二教論を『宋高僧伝』『僧史略』を通して点検し、北宋を代表する賛寧・智円・契嵩の三教論ないし儒仏一致論について、中唐の宗密の三教論と対比しつつ詳しく検討する予定である。
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Research Products
(1 results)