2005 Fiscal Year Annual Research Report
東北における徂徠学の展開-庄内藩にみる出版政策と徂徠学の思想的位置について
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17520040
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
瀬尾 邦雄 茨城工業高等専門学校, 人文科学科, 教授 (90280338)
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Keywords | 『周易解』 / 『周易断叢』 / 出版政策 / 致道館 / 庄内藩 |
Research Abstract |
本年度は庄内藩が徂徠の思想的影響をどの様に受け、それを致道館版経書の出版にどのように反映させていったのかを検証した。庄内藩は徂徠の遺志を継ぎ『周易解』『毛詩正文』『孝経正文』『尚書正文』『大学中庸正文』『葬礼略』等を出版したが、また春台の『論語古訓外伝』『孔子家語増注』『聖学問答』等の出版の際にも資金協力を行った。更に、庄内藩儒達は徂徠や春台等の経書を出版したり資金協力するだけではなく、庄内藩儒自身による『周易解』『周易断叢』『尚書国字解』等の解釈書も刊行している。 ではなぜ庄内藩はこうした古典籍の刊行を行ったのであろうか。とうした課題を究明するにあたり、本年はその考察対象を致道館版『周易解』『周易断叢』に置いた。その理由は本書が前述したように単に徂徠及び春台の経書及び理論書を出版したのではなく、庄内藩儒達が徂徠学をどの様に解釈し、どの様に致道館版古典籍の中に先師の学説を継承・発展していったのかが考究できる文献だからである。つまり、庄内藩儒達の手による初めての『周易』の解説書であり、庄内藩儒達による初めての理論書だからである。更に、致道館祭主白井朱太夫を初め、出版を推進した庄内藩儒達に視点を当て、どの様な意図の基にどの様な効果を求めて本書を出版したのか、つまり致道館における出版政策の検証を行った。 その結果、こうした出版政策は藩学に徂徠学を据えつつ、中国古典を再解釈し、朱子学の理念的な経世論を実践的現実的経世論へと読み替え展開しようとする意図の基に行われたものであることが判明した。こうした出版動向は東都における儒者の出版政策とは根本的に異なるものである。
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Research Products
(1 results)