2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下田 正弘 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (50272448)
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Keywords | 大乗涅槃経 / チベット訳 / 漢訳 |
Research Abstract |
大乗涅槃経は3-4世紀には制作されていたとみなされる大部の大乗経典であり、成立の順序において古層、中層、新層にほぼ三等分割されるとともに、そこには初期大乗仏教から中期大乗仏教にかけての歴史的変容の過程があらわれている。現存する資料として大乗涅槃経は中央アジアから発見されたサンスクリット語写本、5世紀に中国で翻訳された二つの漢訳(曇無讖訳、法顕訳)、10世紀に翻訳されたチベット訳という系統のことなるテクストが存在する。 今回の研究はそのうち中層部分について文献学的に詳細な解明をほどこすことを目的とする。申請者はこれまで初期大乗に属する大乗涅槃経(古層)について文献学的解明をすすめ、すでにその成果を公表した(『蔵文和訳・大乗涅槃経1』山喜房仏書林,1993)。本研究はそれにつづくものである。 今年度は、大乗涅槃経のチベット訳のテクスト校訂を進め、Peking, Derge, Stogの全体を入力した。すでに一部の専門研究者にはこの成果のレヴューを求めて公開している。さらにNarthan版を校合中である。18年度には全体を公開する予定である。また上述の二漢訳との対照も進めており、比較対照テクストをほぼ完成させることができた。 しかし、今回の成果は、これらの文献研究の成果を、これまでの長期にわたる大乗経典の形成過程についての研究成果の蓄積を含め、ヨーロッパにおけるアジア研究の拠点である、ロンドン大学SOASにおいて、10回の講義を通して集中的に発表ができた点にある。これによって本研究の意義は、世界的に周知されることになった。
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Research Products
(2 results)