2005 Fiscal Year Annual Research Report
宗教聖典の権威論証に現れるインド的思惟の特質解明-ユダヤ学との対話を手掛かりに
Project/Area Number |
17520045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸井 浩 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30229603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手島 勲矢 大阪産業大学, 人間環環境学部, 教授 (80330140)
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Keywords | ニヤーヤ・マンジャリー / AcAryAH / vyAkhyAtAraH / 寛容精神 / 聖書解釈 / スピノザ / 比喩 / マニモニデス |
Research Abstract |
本研究は、インド哲学諸文献に現れる「ヴェーダ聖典権威論証」を綿密に解読しつつ、第一線のユダヤ学研究者との緊密な対話を重ねて、宗教伝統と論理的思考が相互補完的に展開するインド的思惟の特質の一端を、文献実証的かつ比較思想的に解明することを目的とする。科研費交付通知が10月であったため、研究は17年秋からのスタートとなった。まず11月に研究代表者と研究分担者は今後の具体的な研究計画を討議した上で、当初の予定どおり、本年度はそれぞれ個別研究を推進することに決めた。代表者は主要な文献の一つである『ニヤーヤ・マンジャリー』の第1章と第3章の該当箇所の分析を行い、7月に日本印度学仏教学会第56会学術大会で口頭発表を行い、その内容は英語論文で発表した。さらに、同文献中で言及される、すべての宗教は妥当である、という見解の分析を行った。その成果は平成18年度に英語論文として発表する予定。またインド哲学における寛容宥和精神について中村元氏が行った分析を批判的に検討し、私見を簡潔に『春秋』に発表した。他方、研究分担者はまず、マレーシアで行われたInternational Islamic Universityと同志社大学の共催シンポジウム"Salvation and Messianic Movements in Monotheistic Religions : Contemporary Implications"に参加して、イスラム学者の中でユダヤ教の聖書解釈に関する発表を行い(Salvation and Judaism : unfinished concerns in time and space)、宗教聖典とその解釈論理の問題を、各宗教の教義的枠を越えた視点から接近する新たな道筋を拓いたほか、西欧歴史学の特殊性の再認識したことで、本研究におけるユダヤ思想とインド思想との比較の視座をより豊かにする結果が得られた。そのほか、印刷中であるが、12世紀アンダルスにおけるメタファー解釈に関する論文二本を書いたことも、次年度からのインド学の論理構造と対話する上で、よい準備となった。
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