2006 Fiscal Year Annual Research Report
宗教聖典の権威論証に現れるインド的思惟の特質解明-ユダヤ学との対話を手掛かりに
Project/Area Number |
17520045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸井 浩 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 教授 (30229603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手島 勲矢 同志社大学, 大学院・神学研究科, 教授 (80330140)
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Keywords | ニヤーヤ・マンジャリー / アーガマ・ダンバラ / mahAjana-parigraha / 包括主義 / ユダヤ教の聖書解釈 / 近代化 / 歴史意識 / 宗教原理主義 |
Research Abstract |
第一線のユダヤ学研究者との緊密な対話を手掛かりに、宗教聖典の権威論証に現れるインド的思惟の特質解明を目指す本研究課題の2年目にあたる本年度、まず研究代表者は主要文献の一つ『ニヤーヤ・マンジャリー』の「ヴェーダ聖典権威論証」におけるmahAjana-parigraha(立派な人ないし多数の人による受容)の概念内容検討を行い、その観点からインド思想における宗教と哲学の接点を論じた(記念論文集に公表)。また同書同章および同一著者の哲学的戯曲『アーガマ・ダンバラ』に現れる「すべての宗教(聖典)は正しい」という見解を、「包括主義」や寛容精神の問題と絡めて分析し、哲学と宗教の緊密な関係や、異宗教との対話等の問題への言及もかねて、同志社大学21世紀COEプログラム部門研究1「一神教の再考と文明の対話」第4回研究会で口頭発表を行い、かつ一神教研究者との有意義な意見交換を行った(同COE2006年度研究成果報告欝に掲載予定)。他方、研究分担者は、新書『原理主義から世界の動きが見える』(PHP新書、2006)の第5章(218-284)において、西欧の近代化と原理主義の発想の違いを、シオニズムを例に取り説明し、その際にユダヤ教の聖典主義と近代化を推進する世俗的科学主義、どちらにも客観主義と主観主義の両面があることを論じた。他に論文「スピノザのマイモニデス批判:中世ユダヤのメタファー解釈との関わりで」を発表し、二者択一のあり方が問題となるメタファー解釈が神への信仰の有無によって変化することを示し、聖書解釈と近代化と政治思想の深い三角関係を示した。また研究代表者と研究分担者は日本南アジア学会第19回学術大会小パネル「インド的思惟と歴史意識」に共同参加した。代表者はパネル企画の趣意説明を行い、かつ中世インドの哲学伝統における歴史意識の欠如事例を考察し、分担者はユダヤ学における歴史主義の葛藤が近代と深い関係にあることについて発表をした。
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