2005 Fiscal Year Annual Research Report
アタルヴァ・ヴェーダ・パイッパラーダ・サンヒタ-第10巻の校訂研究
Project/Area Number |
17520048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
土山 泰弘 埼玉工業大学, 人間社会学部, 助教授 (30348297)
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Keywords | Veda / Atharvaveda / Paippaladasamhita / 古代インド / 王権 / 祭式 |
Research Abstract |
本研究はパイッパラーダ・サンヒター第十巻の校訂ならびに文献学的注記を目的とするが、平成十七年度における研究計画として掲げたのは、Griffiths教授(ライデン大学)より供与された写本のトランスクリプションの作業を行うことと、一部の賛歌について内容研究にまで踏み込んだ作業を行うことであった。このうちトランスクリプションの作業については、それぞれの賛歌の内容研究と併行して進めていくこととして、全体の三分の一近くを終了した。 賛歌の内容研究については、前年度より開始したパイッパラーダ・サンヒター10.4の研究が今年度中に公表される予定である。この研究は従来「王国、王権」と理解されてきたrastraが、実質的にはrastraを有する王として理解される場合があること、ならびにrastra形成に必要な部族和合の場として集会(samiti)が、大きな役割を果たしていることを指摘したものである。 またパイッパラーダ・サンヒター第十巻の冒頭の賛歌10.1をとりあげて、検討を加えた。この賛歌は魔女サダーヌヴァーの排除を目的とするものであるが、従来資料の不足によってサダーヌヴァーの特性・容姿を明確に捉えることに困難があった。本研究では、10.1の賛歌はサダーヌヴァーが憑いている雌牛の容姿を魔女の容姿に重ねて描写しているところに特色があること、このような憑く主体と憑かれる対象との不明瞭さがサダーヌヴァーをはじめとする魔類研究の困難にしていることを指摘した。この研究は平成十七年9月に開催された北海道印度学仏教学会で発表した。 なお、ヴェーダにおける王の権威の概要について、平成十七年度10月に開催された南アジア学会で発表した。この発表はパイッパラーダ・サンヒター第十巻をはじめとする王権賛歌が、リグ・ヴェーダを中心に進められてきた王権理解を補完するものであること、また王権思想においてしばしばとりあげられる王と祭官の関係について、祭祀のプロセスに密着した理解が大切であり、祭祀的文脈を捨象して語ることは不適当であると述べた。以上
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Research Products
(1 results)