2005 Fiscal Year Annual Research Report
仏教における主張命題の意義-梵文写本『知識論決択』の解読に基づいて-
Project/Area Number |
17520050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩田 孝 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80176552)
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Keywords | 仏教論理学 / 仏教における悲愍 |
Research Abstract |
法称の主著『知識論決択』第三章における主張命題の定義に関する論述を解析し、独語訳注を作成することを目的とする。今年度は、主張命題の定義に用いられた「[立論者に]願われた[事柄が主張命題である]」という規定の部分を分析した。この規定の目的は、曖昧な主張命題を立て、その曖昧さを利用して、自説を証明する、擬似的論証を排除するところにある。疑似的論証の中には、極めて巧妙に構成されたものもあり、それを論破する法称の論述には、チベット訳のみでは理解し難い所が少なくない。中国のChina Tibetology Research Center所蔵の同書の梵文写本の閲覧が可能になったので、それを参照して、チベット訳からは理解不可能であった部分の補正を行った。また、オーストリア学士院の東洋学研究者、H.Krasser博士の助力を受け、独語訳注の推敲を行った(来年度に研究継続)。主張命題における上記の規定に関する法称の基本的な見解については、Dharmakirti's interpretation of the word ista in the difinition of the thesisと題する論文がM.Hahn教授記念論集に収載予定である。 更に、法称の論理学的思考の考察の応用問題として、仏教の宗教論での慈悲についての法称の見解を分析した。有限な身体を有しつつも、輪廻の生存において、悲愍を連続的に修習することが可能であり、その修習の極みにおいては、衆生における悲愍は任運に作用する。この法称説を、法称の論理学の推論の形式に則して分析した。これを、国際会議Fourth International Dharmakirti Conference Vienna 2005においてCompassion in Buddhist logicと題して発表した。
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