2006 Fiscal Year Annual Research Report
仏教における主張命題の意義-梵文写本『知識論決択』の解読に基づいて-
Project/Area Number |
17520050
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩田 孝 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80176552)
|
Keywords | 仏教論理学 / 主張命題 / sadvitiyaprayoga / 仏教における悲慇 |
Research Abstract |
法称の『知識論決択』第三章の中の主張命題の定義を論じる箇所について、二本のサンスクリット語写本とチベット訳を対照して、梵文テキストを校訂して、テキストのドイツ語訳注研究の基本資料とした。このテキストについては、Tnmemans教授が既に校訂を始めているので、筆者の作成したテキストの一部を、ローザンヌ大学のTillemans教授の校訂のための資料として提供した。メールを通してテキストの同異について意見を交換した。この部分については、19年度の科学研究費を使用して、同教授の共同研究者が滞在するウィーンの科学アカデミーに出張し、更に検討を加える予定である。 筆者は『知識論決択』第三章のドイツ語訳研究を担当している。同書の主張命題の定義の中の「立論者によって意図された(ista)」事柄が主張命題である、という規定に関する法称の論述を考察した。その成果の一部としての英文の論文"An analysis of examples for the interpretation of the word ista in Dhaumakmti's definition of the thesis"は、ウイーン大学名誉教授のSteinkellner博士記念論文集(2007年に刊行予定)に収載される予定である。また、主張命題の「意図された」という規定の部分についてのドイツ語訳研究は、ウィーン科学アカデミーのKrasser博士によるドイツ語の第一次チェックが済み、今年の夏に最終チェックを行う予定である。 『知識論決択』の研究は、仏教の論理学・認識論の基礎学である。その基礎学の応用として、法称の宗教論の記述の中から、仏教の慈悲の在り方を論じた部分を論文「プラジュニャーカラグプタの悲慇修習論(1)」(『早稲田大学大学院文学研究科紀要』)にて考察した。
|
Research Products
(1 results)