2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの宗教思想研究-ヴィジョンとその図像を中心に-
Project/Area Number |
17520054
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
細田 あや子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教授 (00323949)
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Keywords | ヴィジョン / 宇宙論 / 異界論 / 新プラトン主義 / 不可視なるものの表象 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ドイツ、12世紀の女子修道院長ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの三大幻視著作を中心に、そのテクスト解釈と写本挿絵の分析を通して、彼女の思想を多角的に考察してゆくことである。本年度は、ヒルデガルトのテクストのうち第三幻視書の精読をおこない、あわせて挿絵写本についても様式史、図像学的分析をし、テクストと図像イメニジとの関連を考察した。 ヒルデガルトの三大幻視書のなかの最後の作品『神の御業の書』は、ヒルデガルトのヴィジョンの集大成ともいえる作品で、さまざまな特徴が見出される。なかでもヴィルトゥテスという概念が、彼女の思想を理解するにあたり重要な役割を果たしていることが一つの特徴となっている。このヴィルトゥテスという語によって多層的な意味内容が語られる。彼女の著作では、抽象的なヴィルトゥテスが具体的に人間の姿となって表象されるが、『神の御業の書』III3のヴィジョンにおける<愛>、<謙譲>、<平和>は、注目に値する。 これらヴィルトゥテスは、神に由来し、神から人間へと働きかけるものと、人間が有すべきもの、すなわち神の業、計画に従い正しく振舞うために人間の内部の魂(アニマ)の力として必要とされるべきもの、という見方ができる。だが、後者の場合も結局は神の計画により人間が持つべきものとして神から授与されると考えられる。つまりは、神から発するものといえる。したがって、ヴィルトゥテスの訳語としては、力、神の力、天上の諸力といった方がより適切であることが確認された。 また、ルッカ写本は、13世紀前半、ライン川流域地方で制作されたのではないかと推測されているが、III3の挿絵図像に関してもそれを裏付けるような分析結果が出された。
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Research Products
(2 results)