2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yonago National College of Technology |
Principal Investigator |
布施 圭司 米子工業高等専門学校, 一般科目, 助教授 (70290781)
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Keywords | ヤスパース / ブーバー / 実存 / 交わり(コミュニケーション) / 信仰 / 人格 |
Research Abstract |
平成17年度は、人間存在に対して交わり(コミュニケーション)が果たす役割を究明するための基礎作業として、ブーバーにおける人格的交わりとヤスパースにおける実存的交わりを比較し、両者の共通点、相違点、異同の理由について考察を行った。その結果、次のようなことが明らかになった。 まず、両者の共通点としては、日常経験における自己存在同士の情報伝達や自己存在による事物の認識・利用(「客観的交わり」)に止まらない自己存在の成立の根源としての交わり(「本来的交わり」)を論及した点、客観的交わりと本来的交わりを無関係と捉えるのではなく客観的交わりの充実により本来的交わりが実現すると考えた点、自他の区別が消滅する神秘的融合と本来的交わりを区別する点が挙げられる。 次に、両者の相違点としては、ブーバーは本来的交わりを人格同士の交わりのみに限定せず人間と事物の交わりも含めるがヤスパースは実存同士の交わりに限定する点、ブーバーは「神」ないし「超越者」との直接的交わりを想定するがヤスパースは否定する点が挙げられる。 両者の主張を総合すると、自己存在にとって本来的な交わりは、そのつど可能な限り多数の存在を統一することを志向し、同時に異なる自己存在同士の交わりを可能にする根拠(自己存在と世界を包含する神ないし超越者)への展望を持ち、そのつどの交わりの暫定性を忘却することなく交わりを継続することであると言える。そして両者の相違の理由については、ブーバーは日常経験全体が本来的交わりにより方向付けられるという交わりの圧倒的な意義に焦点を当て、ヤスパースは実存にとって本来的交わりの根拠は常に無限の目標であるという交わりの非完結性・継続性に焦点を当てたためと考えられる。
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Research Products
(1 results)