2006 Fiscal Year Annual Research Report
インド、タンジャヴールのブリハディーシュヴァラ寺壁画に関する現地調査および研究
Project/Area Number |
17520085
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
定金 計次 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (40135497)
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Keywords | 美術史 / 東洋史 / インド / ヒンドゥー教 / 壁画 / 寺院建築 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続いて研究対象であるタンジャヴールのブリハディーシュヴァラ寺本殿回廊壁画を調査すると共に、様々な点で比較を行うため、ヴィジャヤナガル王国時代壁画の調査を行った。ブリハディーシュヴァラ寺本殿回廊壁画に関しては、様式的な特色の解明に努めた。同壁画は、技法面において人物像に全面的に量取りを施すなど、11世紀初乃至前半の制作にしては、古代の伝統を良く保持していると言える。その点で少なくとも中世半ばまで、南インド壁画が北インドより変化が緩やかであったことが明らかである。しかしながら、描写された人物像の形態は、同じ南インドの9世紀に描かれた壁画などと比較して、単純化・抽象化が大きく進展していて、やはり制作時期が遅れることによる特質が判然と現れている。暈取りについても、同様に施され方が画一的になっている。ただ制作を担当した画家が複数であったため、一部には、単純化・抽象化が顕著でない人物描写も認められる。殊に「トリプラーンタカ」を主題とする壁面では、暈取りの技法も他より複雑で、かかる点が判然と観察される。これは、怒りの表情を示す人物像が多く描かれ、人物の輪郭線が他の壁面に比べ複雑なためかも知れないが、それだけではなく、担当画家が古代の伝統に近い特質を保持していたと見られる。このように個々の描写に関しては、ある程度表現の幅が見られるものの、画面構成については、総ての壁面に大差なく、画面の奥行きが古代に比べて浅くなると同時に、大画面に多くの人物像を配置するのに、はっきりと壁面を複数の階層に分割している。つまり、細部において古代の伝統を保ちながらも、画面構成では、極めて単純な原理によって処理されているのである。かかる特質が更に進展し、画面そのものを細分し、空間的な深さを求めず平面的に人物等を配置するヴィジャヤナガル王国の壁画が後代に成立したと考えられる。
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Research Products
(2 results)