2007 Fiscal Year Annual Research Report
インド、タンジャヴールのブリハディーシュヴァラ寺壁画に関する現地調査および研究
Project/Area Number |
17520085
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
定金 計次 Kyoto City University of Arts, 美術学部, 教授 (40135497)
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Keywords | 美術史 / 東洋史 / インド / ヒンドゥー教 / 壁画 / 寺院建築 |
Research Abstract |
本年度は、研究対象となるタンジャヴールのブリハディーシュヴァラ寺壁画とともに、比較研究のため同じタミル・ナードゥ州のカーンチープラムにあるヒンドゥー教寺院のカイラーサナータ寺壁画と、シッタンナヴァーシャルにあるジャイナ教石窟壁画を改めて調査した。いずれもブリハディーシュヴァラ寺壁画に先行する8世紀および9世紀の重要作例である。古代の5乃至6世紀に描かれたアジャンター後期壁画は、グプタ朝の全盛期直後の古典様式から始まり、過渡的様式を経て中世様式に移行する動きが認められる。本質的に北インドの様式に属するアジャンター後期壁画とは異なり、カイラーサナータ寺壁画は、顔貌表現の特質から明らかに南インドの特色を示している。しかしながら技法と様式の点で、二百年ほど先行するアジャンター後期壁画との差違が、制作年代の差ほど大きくない。既に指摘したように、北インドに比べて南インドの壁画が、中世に入ってからの技法・様式変化が緩慢であったからである。かかる状況は、同様に変化が緩やかではあるが、9世紀に描かれたシッタンナヴァーシャルのジャイナ教石窟壁画において明確な変化が認められるようになる。つまり形態が単純化する傾向が強まり、また暈取りが形骸化して退化する方向性を示している。南インド壁画でも、中世的傾きが判然と展開していたと見られる。もう一点重要なのは、ここにフレスコ技法が確認出来ることである。それは11世紀のブリハディーシュヴァラ寺壁画にも受け継がれている。様式的には、制作年代に9世紀と11世紀という百五十年余りの差があるものの、大きな決定的な変化は認められない。かかる状況から、南インドにおいては、壁画が9世紀頃大きな転換期を迎えたと見ることが出来る。
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Research Products
(1 results)