2005 Fiscal Year Annual Research Report
音楽論に関するシャバノンの主著のクリティカルエディション作成のための研究
Project/Area Number |
17520091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
小穴 晶子 多摩美術大学, 造形表現学部, 教授 (40215140)
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Keywords | 18世紀 / フランス / 音楽思想史 / 音楽美学 / 音楽史 |
Research Abstract |
シャバノンの主著「音楽論」の日本語訳を進めつつ、註の充実を検討した。特に、シャバノンが著述を行うために前提とした主要な先行文献の内容の検討とその内容とシャバノンの主張との関連について考察した。このため、パリにおいて、研究に必要な資料の調査、検討、収集をおこなった。中心となったのは、シャバノンが自らの「音楽論」の序文で引用している2点の主要先行著作の原典の調査・検討である。これら2点の主要先行著作、具体的にはボワイエの著作とモルレの著作を図書館で閲覧し、熟読、検討してシャバノンの主張との類似点、および、相違点について考察した。成果としては、一般の研究書ではモルレがシャバノンに与えた影響が大きいとされているのだが、実際にこの両著を検討してみると、むしろ、ボワイエの影響のほうが強く、より重要な先行文献であることが分かった。モルレは、音楽による表現の不確かさを論じながらも、結局は音楽が「模倣の芸術である」という当時の共通認識を超えてはいない。それに対して、ボワイエは、音楽の模倣としての表現の曖昧さを指摘し、それを肯定的に評価して当時の一般認識を超えた独創的な見解を示している。さらに、シャバノンの著作で深められる「キャラクテール論」の萌芽と見なせる主張もあり、この点は従来の研究で全く触れられていない問題であり、ボワイエの重要性を見逃すことはできない。その他、18世紀フランス音楽思想史に関する最新の研究書についても調査をおこない、シャバノンの時代の背景についての認識を深める成果を得た。
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Research Products
(1 results)