2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520093
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
清瀬 みさを 同志社大学, 文学部, 助教授 (00367963)
|
Keywords | 美術史 / 美学 / 建築史・意匠 / 都市計画・建築計画 / 環境調和型都市基盤整備・建築 |
Research Abstract |
平成17年度は「建築家・武田五一と京都近代の都市景観」を考察するにあたって、武田が設計あるいは設計指導をした橋梁と公共建築を中心に基礎的な調査を行った。とりわけ、武田は「橋梁」が都市景観の規矩となるべきであるという先駆的な思想をもち、そのことが従来の研究史では看過されてきたことから、橋梁を重点的に考察の対象とした。 実際に実地見聞、撮影を行ったのは、大正末期から昭和初期にかけて竣工した京都(鴨川の加茂大橋、河合橋他)、大阪(堂島川の淀屋橋、桜宮橋、田蓑橋、渡辺橋他)、名古屋(堀川、新堀川の岩井橋、記念橋)の橋梁群である。それらを竣工当初の図版、現状をあわせて比較検討をすると、三都市における河川周辺の都市環境、機能に応じて、橋梁の様式や色彩、意匠、橋詰め広場のあり方も異なることが確認された。また一方で、近代の名橋を次々に架橋していた大阪の大正末期から昭和初期にかけて、雑誌『大阪人』、『上方』所載の橋梁に関する武田論文そして同時代関西の建築家、橋梁技術者、文化人らの論文やエッセーを分析すると、とりわけ水都大阪の近代において、陸運中心の現代におけるよりも遙かに橋梁が重要なランドマークとして意識されていたことが明らかになった。 さらには橋梁の外観、そして景観との関係について考察した図書資料の収集につとめた。建築物に関しては「建築史」という学問分野が成熟しているが、橋梁の都市景観との関連での美学的・美術史的・建築史的な先行研究が乏しいために今後、武田の建築文献も併せて総合的に考察することで、武田の求めた都市景観の理念が導かれることが期待される。 一方で、名実ともにランドマークとなる武田設計の公共建築については、周辺環境、とりわけ、竣工当初の周辺の自然、とりわけ緑、土の色彩との調和に留意しつつ取材、撮影、資料収集を行いつつある(京都市庁舎、京都駅前の関西電力ビル、京大時計台、同志社女子大栄光館、旧山口県庁舎および議事堂、名古屋市公会堂、求道会館、名和昆虫記念館等々)。
|