2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520093
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
清瀬 みさを 同志社大学, 文学部, 助教授 (00367963)
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Keywords | 美術史 / 美学 / 建築史・意匠 / 都市計画・建築計画 / 環境調和型都市整備・建築 |
Research Abstract |
平成19年度は、当該課題研究「建築家・武田五一と京都近代の都市景観」の考察を進めるにあたって、一昨年、昨年度に引き続き、武田五一の現存する建築作品の実地調査、武田および比較対照すべき同時代の建築家の論文、雑誌記事などの収集と分析を行った。 研究の目的は、主として都市景観のランドマークとなる公共建築、すなわち官公庁(京都市庁舎、旧山口県議事堂)、学校(京都大学時計台)、大規模な商業建築(京都電灯旧社屋)、橋梁(加茂大橋、桜宮大橋)などの様式的特質とその背景にある武田の建築思想の一端を明らかにすることにあった。 具体的に実地調査を踏まえた作品研究として、同時代の建築家の設計になり、武田と相互に様式的な影響関係をもち、かつ機能を同じくする現存の建築作品との比較検討を行った。いずれもが都市景観のランドマークとなっている事例である。京都市庁舎(昭和2、6年)と大連市庁舎(松室重光設計、大正8年)、東京大学時計台(内田祥三設計、大正14年)と京都大学時計台(大正14年)、大阪ガスビル(安井武雄設計、昭和8年)と旧京都電灯本社屋(昭和12年)、淀屋橋(大谷龍雄基本設計、昭和10年)と加茂大橋(昭和6年)などである。それらの武田建築はいずれもが比較対象例ほど景観から際だっていないが、京都市内の近代都市景観のベースとなっていることが注目された。こうした事例研究を通じて、いずれの場合も、武田建築は、「没個性的」と称せられる要因である陰影の浅い外観の構成と押さえた色彩が特色として指摘される。それこそが、武田の建築論集に散見される「建築と周囲との調和」への試み、すなわち、現在新聞紙上を賑わせている京都の「都市景観」との調和を意識した最初期の近代建築であるということが検証された。
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