2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520094
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岸 文和 同志社大学, 文学部, 教授 (30177810)
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Keywords | 絵画行為 / 言語行為 / メディア / 視覚イメージ / 画像 |
Research Abstract |
視覚イメージ(画像)は、視覚的コミュニケーションのためのメディアとして、さまざまな機能を担ってきた。本研究の課題は、視覚イメージが担う5つの機能--指示的/表出的/指令的/メタ絵画的/美的機能--を、コミュニケーション行為の観点から再検討することにある。この課題を解決するために、本研究は、言語行為論の理論的枠組みを援用することによって、絵画行為--画像を一定のコンテクストにおいて使用(制作/受容)すること--の多様性を概観した上で、その行為論的な構造--画像が帯びる特定の形式的・様式的特徴と行為の意図の連関--を分析し、当の絵画行為を公共的/制度的な出来事として成立させている規則体系を明示することを試みる。 平成18年度は、一般的な「絵事の構造」と「絵画の機能」を、浮世絵という近世に固有の画像に即して特殊化・具体化し、絵画行為論の観点を導入することを目指した。具体的には、「浮世草子がつくる浮世絵イメージ--絵画行為論の立場から」(『美術フォーラム21』第14号)において、浮世絵のメディアとしての特殊性を、西鶴の浮世草子の世界のなかで検証し、浮世絵が官能的・当世的・機知的なメディアとして表象されていることを明らかにした。また、「浮世又兵衛はいかにして伝説となったか--『傾城反魂香』と『風流鏡が池』を中心に」(近畿大学日本文化研究所編『「脱」の世界--正常という虚構』)において、西鶴本に続く「好色本」/西沢本/八文字屋本のなかで、東の菱川師宣、西の吉田半兵衛が描く美人画が、浮世絵を代表する画像として表象されるようになるとともに、官能的・機知的なメディアとしての性格付けが徐々に希薄になることを指摘した。また、「浮世絵のプラグマティクス--絵画行為論の視点から--」(京都大学博士学位論文)において、現時点での「絵画行為論」の構想に、可能な限り具体的な輪郭を与えることを試みた。
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Research Products
(3 results)