2006 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア・ルネサンスにおける古代異教的慣習の残存をめぐる歴史人類学的研究
Project/Area Number |
17520096
|
Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
水野 千依 京都造形芸術大学, 芸術学部, 助教授 (40330055)
|
Keywords | 美術史 / イタリア・ルネサンス / 奉納像 / 肖像 / 預言 / 終末論 / 葬祭儀礼 / 歴史人類学 |
Research Abstract |
本研究は、ルネサンスのイメージ文化における古代異教の慣習の残存を、終末論的預言や奇蹟のイメージ、葬祭用肖像、奉納像という三つの事例に即して考察することを目的としている。 本年度は、所属機関より半年のサバティカルを許可され、平成18年4月から9月にかけてイタリアに滞在し、おもに、終末論的預言にまつわる言説・図像両面の一次資料の収集を集中的に行った。残存率のきわめて低い民衆向けの預言本から、知的な人文主義的サークルに流行した占星術書や暦書まで、さまざまなレベルの預言集を収集し、その伝達経路についても調査した。さらに、やはり非常に希少な図像資料についても、預言本の挿絵からちらし絵まで多岐にわたって収集した。また、各地に残る当時の日記や地方史を解読し、同時代の心的反応の多様なレベルについても考察を進めてきた。今後、これらの資料をさらに解読しながら、ルネサンスの終末論的預言文化におけるイメージの地位について、一冊にまとめ出版する予定である。 さらに今年度は、ルネサンス期の中産階級の出産儀礼に登場する出産盆やマジョリカ陶器、人形を、古来の「視覚的伝染病」という信念と関連づけ、イメージのもつ呪術的力について考察し、論文にまとめた。そこでは、婚礼や出産儀礼において好まれたイメージ(「健全な幼児」)と禁忌とされたイメージ(「怪物」)との相反関係のなかに、ひとえに出産への不安や祈願という次元にとどまらない当時の集団的心性を解読した。 また、近代以前の芸術作品への修復的介入のあり方を、イメージの力の「活性化/無効化」という視点から考察し、現代の保存修復とは異なる介入のあり方を浮彫し、論文にまとめた。 いずれの研究も、歴史人類学的にイメージの力や地位を考察する本科研の目的に即したものであり、その成果はともに2007年に刊行される予定である。
|
Research Products
(2 results)