2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 泰明 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (60191813)
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Keywords | 古来風躰抄 / 藤原俊成 / 身 |
Research Abstract |
本年度のもっとも主要な研究実績は、藤原俊成の歌論の主著『古来風躰抄』の注釈の完成である。この注釈の新しさは、(1)『万葉集』次点本の中での本書の本文の位置付けを示したことなど、本書に抄出された和歌本文の独自性に留意したこと、(2)本書の中の叙述と俊成の和歌詠作との関連を具体的に指摘したこと、が挙げられる。これによって、従来俊成の和歌「理念」の書として抽象的に捉えられがちであった本書を、具体的な言語意識・表現意識のもとに捉えることが可能になった。当該注釈は、『歌論歌学集成』中の1巻に所収される形で、三弥井書店より本年4月に刊行予定である。ついで論文「源氏物語と新古今和歌」(『源氏物語とその享受 研究と資料』所収、武蔵野書院、2005・10)では、藤原俊成はじめ新古今歌人にとって『源氏物語』とは何であったかを考察した。結論として、『源氏物語』がこの時期の歌人たちの内面に深く関わり、それによって同書の位置づけが、私的なものから公的なものへと変化しつつあったことを、具体的な用例を挙げつつ指摘した。これによって、『源氏物語』享受の画期を示した俊成の、新たな文学史的意味付けが可能になった。また、論文「序論 身の表現としての和歌」(『和歌をひらく第1巻和歌の力』所収、岩波書店、2005・10)は、『古今集』仮名序以来の歌論の流れを押えながら、その背後に「身」への意識が潜在していることを明らかにした。これによって、『古来風躰抄』などにおいて、なぜ俊成があれほど「姿」にこだわったのか、その文学史的必然性が明らかになった。
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