2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520107
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 泰明 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 教授 (60191813)
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Keywords | 頓阿 / 問答的性格 / 題詠 / 古来風躰抄 / 万葉集 |
Research Abstract |
今年度の研究実績の柱は2本ある。一つは、雑誌『文学 隔月刊』に掲載された、学術論文「頓阿論--題詠のポエジー」の刊行、もう一つは、『古来風躰抄』の注釈の刊行である。前者は14世紀を代表する歌人頓阿の題詠の方法について分析したもので、そこに連歌の付合との方法的な共通性、贈答歌の手法に通じる本歌取りの方法を看取し、これを問答的性格と名づけた。そして、その特質ゆえに、南北朝時代の動乱の中、広範な階層の人々の和歌への関心を喚起することができた、それは中世初頭の藤原俊成の業績に比肩すべきものである、と規定した。後者の『古来風躰抄』の注釈は、『歌論歌学集成』の一環としてその第七巻に、小林一彦・山本一の別作品の注釈とともに収載されたものだが、本研究課題の研究目的の重要な部分を達成するものであった。その特色は、以下の通りである。(1)『古来風躰抄』の底本として、『古来風躰抄』の原本と呼んでよい俊成自筆本である冷泉家時雨亭文庫所蔵本を初めて採用したこと。(2)『古来風躰抄』に見られる藤原俊成の和歌観にについての、最新の研究成果を取り込んだこと。本書については、ここ20年ほどで、それまでの通説を根底から疑う新説が提出されていた。渡部自身の説をも含めたその新説に基づいて、新たな解釈を施した。(3)『万葉集』抄出部分について、とくにその訓読本文に関しての最新の成果を導入した。(4)『古来風躰抄』の宛先として、新説である守覚法親王説を検討した。以上を主な新機軸として、『古来風躰抄』の注釈に新生面をもたらした。
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