2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520107
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 泰明 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (60191813)
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Keywords | 千載和歌集 / 百人一首 / 縁語・掛詞 / しらべ |
Research Abstract |
今年度の本研究課題における実績は三つある。一つは、『国文学解釈と鑑賞』五月号に掲載された学術論文、「『千載和歌集』-中世の虚構と現実」である。藤原俊成が撰者となった『千載和歌集』の覊旅の部の配列と構成を、『久安百首』を出典とする和歌を中心に据えて分析した。とくに崇徳院の二首が、それ以降の現実と和歌史を予言するかのような働きをし、そのことを浮き彫りにする配列・構成であることを明らかにした。二つ目は、『国文学』12月臨時増刊号に発表した、「表現論-掛詞・縁語をどう考えるか」である。これは『百人一首』における縁語と掛詞の意義を考察したものである。『百人一首』の選歌は、『千載和歌集』以降の和歌に、縁語・掛詞を用いた歌が異様なまでに多いことで特色づけられるが、それらの縁語・掛詞は、ただたんに作者の技巧の跡を示すものではなく、そこには、言葉の偉力に対する歌人の敬虔な思いが込められており、それこそが晩年の藤原定家の歌観の重要な領域だった、と結論付けた。定家は、父である藤原俊成の歌観を継承したのだが、とくに晩年には父の時代への回帰が強く見出されるのである。三つ目は、『古代文学』第47号(平成20年3月)に発表した、「「しらべ」論の根拠」の論文である。これは平成19年古代文学会のシンポジウムで発表したものを活字化したものである。和歌史上の重要な鍵概念である「しらべ」には、根源的なものへの志向を促すような機能があるが、それは和歌定型に強く規制される「しらべ」が、あたかも因果を逆転するかのような感覚をもたらすことに由来するのではないか、という問題提起を行った。
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Research Products
(4 results)