2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520114
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 則雄 島根大学, 法文学部, 助教授 (00252891)
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Keywords | 読本 / 後期読本 / 上方読本 |
Research Abstract |
後期読本に関して、前年度本研究において、上方読本が江戸読本に与えた影響にっいて論究したが、本年度はそれを踏まえながら、江戸から上方への影響に関して考察した。すなわち江戸読本の隆盛期である文化5,6年以降の上方読本の諸作品を検討したところ、上方にそれ以前から存した<絵本もの>の作法を基盤としつつも、江戸の<稗史もの>の方法をそこに融合させた作風が見られるようになっていることが認められた。江戸読本に倣って、<因果>の理法を長編たる全編を統括する原理に据える方法を上方読本でも用いるようになるが、その一方で人物が一定の命運を辿る理由付けを、その人物の生き方や心情そのものに求めるという態度が顕著に見られ、結局のところ、<因果>は絶対的な決定要因とはなっていない。また善悪対立の構図を掲げながら、悪人の側の心中に分け入って描く (迷いや改俊について大きく取り上げる)という方法が見られる。またある人物に関して、その人物の心情の理解者を設定し、理解され扶助されるなどしながらその人物の命運が開けて行くというパターンの話の作り方が頻出することも見出した。このような作法の基本は、上述の上方<絵本もの>に早くから存したものであるので、<絵本もの>の作法を基盤に江戸風を取り入れ融合させたと解するのが妥当である。 なお上方読本の代表的作者の一人である栗杖亭鬼卵の作品二点(『再開高台梅』『北野霊験二葉の梅』)の典拠である実録を発見したので、相互に対比しながら作者による翻案のあり方について分析し、新たな人物の設定、役割の改変など、一定の傾向が認められることを把握した。
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Research Products
(2 results)