2006 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツにおける精神的及び物質的モニュメント(祝典劇・記念碑)の諸相を探る
Project/Area Number |
17520140
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
鈴木 将史 小樽商科大学, 言語センター, 教授 (20216443)
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Keywords | 祝典劇 / 記念碑 / 独文学 / ゲルマニア / 人文主義 |
Research Abstract |
本研究は、近代ドイツにおける精神的モニュメント(祝典劇)及び物質的モニュメント(記念碑)を有機的に関連させながら並行して研究するものである。このうち、18年度は主に祝典劇分野について研究を進めた。ドイツにおける祝典劇は、15世紀末から16世紀にかけて興隆した人文主義時代にその胎動が認められる。その先駆者はロイヒリン、ロッヒャー、ツェルティスといった代表的人文主義者たちで、とりわけロッヒャーは当時の神聖ローマ皇帝マクシミリアンI世を賛美する「フランス王国物語」で宮廷祝典劇の原型を創出し、ツェルティスは、「ディアナ劇」により早くも宮廷祝典劇の完成型を世に送り出した。その後、祝典劇は、人文主義の衰えと共に暫く停滞期が続くが、17世紀初頭に標準ドイツ語普及協会「結実協会」が結成されると、30年戦争の荒廃を嘆き、平和を求める気運がドイツ国内に高まり、それと共にドイツ愛国精神も醸成され始める。そのような折に作られたリストによる3篇の戯曲(「イレナロマキア」、「平和を希求するドイツ」、「平和を歓呼するドイツ」)には、平和への願いにより、皇帝のみならずドイツそのものの安寧を願う理念が盛り込まれた新たな祝典劇性が認められる。すなわち、この段階において初めて、それまでは皇帝礼賛に尽きていたドイツ祝典劇に、後の国民祝典劇へと通じる愛国精神が追加されたと考えられるのである。ただ、後のバロック時代においては、皇帝に代わり絶対的権力を握る封建領主が多数現れた影響で、祝典劇も以前の宮廷祝典劇へと後退傾向を見せるが、そうした中でバロック文学特有の「シュヴルスト」(陰欝なメタファーを多用するマニエリスム的文体)を極限まで推し進めたローエンシュタインによる悲劇群は、祝典劇に一般文学性を付与した点で特筆に価する。この後、宮廷ロココ時代の一時的な祝典劇隆盛を経て、啓蒙時代となり、18世紀後半、ドイツ主要都市における国民劇場の設立気運と共に、いよいよ国民祝典劇創出の動きが本格化してゆく状況を19年度には研究してゆく。
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Research Products
(2 results)