2005 Fiscal Year Annual Research Report
都市ロマンス劇とディケンズの初期小説に関する超ジャンル的研究
Project/Area Number |
17520144
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 英一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40106745)
|
Keywords | ディケンズ / 都市喜劇 / Ben Jonson / Aphra Behn / ジャンル / 小説の勃興 |
Research Abstract |
研究の初年度であるので、次の作業を行った。(1)ディケンズの初期創作活動における演劇的要素の再確認とそのデータの抽出・整理。The Pickwick Papers等の初期作品について、テクストを精査し、具体的な事例を抽出して、電子的なデータとして整理した。(2)17世紀初頭から18世紀までの都市ロマンス劇のデータの収集と整理。17世紀以降の都市ロンドンを舞台とする演劇や市民階級を中心とする演劇について、データの収集と整理を進めた。それらは主として電子媒体によるものであった。(3)小説勃興に関する諸理論の整理。Michael McKeon、Dale Spenderなどの理論について、その有効性と欠陥を確認し、新たな小説勃興理論の構築のための準備作業を実施した。特に、女性の置かれていた社会的・文化的立場についての検討のために必要な資料の収集を行った。(4)王政復古期及び18世紀散文ロマンスの検討。ManleyやHaywoodなど、新興のジャンルである小説に先行し、ロマンスと小説の中間的ジャンルを形成したと思われる作家たちの作品の検討を行った。 以上の4項目の他に、研究完成のための基盤強化のため、次の2つの作業を継続した。(A)演劇から小説へのジャンル転換のダイナミズムを研究する上で最も重要な作家であるAphra Behnについて、研究代表者のこれまでの研究を補強するための再検討。(B)ディケンズに大きな影響を与えた劇作家であるShakespeare、Ben Jonsonのコメディーの再検討。 今年度の研究では、ディケンズが小説家として出発する際に過去の演劇の伝統が果たした役割とジャンル間の相互作用の具体的な相貌をある程度明らかにすることができた。そこで得られた研究成果の発表は平成18年度以降となる。
|