2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520150
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹治 愛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90133686)
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Keywords | H.G.ウェルズ / 『モロー博士の島』 / 生体解剖論争 / 科学の唯物論化 / 動物愛護文化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1870年代なかばから急に活発化しはじめた生体解剖論争をとおして見えてくるヴィクトリア朝文化の諸相のうち、動物愛護文化の確立と、それにともなう唯物論的な科学への批判、さらに、そのような批判を前にした科学の反応を、『モロー博士の島』を中心とするいくつかの文学作品と、この時代の歴史資料とを往還しながら記述するところにある。研究の1年目にあたる本年度は、生体解剖に関連する後期ヴィクトリア朝の文学作品・歴史資料を収集読解することに努めた。その一環として、8月に、ボストン・パブリック・ライブラリ(この分野での必読文献の著者ジェイムズ・ターナーが利用していた図書館)およびハーヴァード大学図書館に行って、日本では入手しがたい第一次資料を収集した。と同時に、それをふくめて、今後読むべきテクストのビブリオグラフィを作成した。 そのうえで、19世紀後半の総合雑誌に掲載された生体解剖論争に関連する論文を読んで、そのなかから論争の争点を構成しているいくつかの頻出するモティーフを抽出しながら、研究の基礎となるノートを作成した(冬学期には前期課程の「総合科目」の授業のひとつでその成果の一端を明らかにした)。さらに、動物愛護の文化と生理学における生体解剖実践の歴史的展開に関する基本的な第二次資料として、ジェイムズ・ターナーの『動物への配慮』とキース・トマスの『自然と人間』を精読した。これらのテクストを読むことによって、来年度『モロー博士の島』について論じるための歴史的背景を理解することができた。
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